Wish2Reform

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科学技術・学術政策研究所に関する問題の検証とその後の経過

―2026年8月14日公表資料 [1]本資料の概要―

2026年8月14日 齋藤経史(kei@jsaito.jp)

[1]本資料の概要

[1-1]本資料の目的と私(齋藤経史)の立場

本資料は、私が2026年3月28日にWish2Reform(https://wish.to/reform/)で公開した文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)における業務管理や博士人材データベース(JGRAD)事業等に関する問題提起を出発点として、その後に確認された事実や経過を整理するものです。2026年3月28日時点で公表した内容を改めて概観した上で、その後に明らかになった事実や関係組織の対応を踏まえて当時の問題提起を検証し、2026年8月時点までの経過を記録し、広く公表することを目的としています。

科学技術・学術政策研究所は、科学技術政策や研究人材に関する調査研究を行う文部科学省直轄の国の研究機関です。私(齋藤経史)は2020年6月1日から2025年5月31日まで同研究所の第1調査研究グループで常勤の上席研究官として勤務しました。その後、2025年6月1日から2026年3月31日まで客員研究官の立場にありました。私は科学技術・学術政策研究所において、博士課程学生や修了者の進路・キャリアを把握する博士人材データベース(JGRAD)事業を担当していました。

本資料で扱う問題は、科学技術・学術政策研究所において2021年以降に生じた業務管理上の問題や博士人材データベース(JGRAD)事業に関する問題に端を発します。その後に明らかになった新たな問題や各種手続の経過も含めて整理し、科学技術・学術政策研究所の個別事例にとどまらず、公務員組織における業務管理、人事評価、意思決定、公益通報等に関する構造的な課題を広く示し、その改善を促すための公開資料です。

[1-2]2026年3月28日のWish2Reformによる情報発信のあらまし

この[1-2]では、2026年3月28日までに一般公開した内容に基づき、科学技術・学術政策研究所で何が起こり、どのような対応を経て同日の公表に至ったのかを簡潔に振り返ります。2026年3月28日時点までの経過と主な問題は、概要図の1ページ目にも整理しています。(https://wish.to/reform/next01/summary260814.pdf)なお、その後の人事異動により、2026年8月14日現在では橋本総括および塩崎所長はいずれも科学技術・学術政策研究所を離れていますが、本資料では2026年3月28日のWish2Reform公開時の科学技術・学術政策研究所における役職に応じて呼称します。

A.2026年3月までに科学技術・学術政策研究所で生じた問題
A-1.当時の同僚の上席研究官の不透明なテレワーク勤務と反復した報告書公刊遅延

当時の私の同僚であった川村真理上席研究官は、2021年9月の着任以降、9割以上の勤務日がテレワークとなっていました。2022年1月25日に川村上席が主著者となって公刊した報告書(調査資料317)では、多数の誤字脱字や記載上の不整合などが確認されました。川村上席の報告書の修正対応(修正版や正誤表の作成・公表作業)は誠実さに欠けるものであり、当時の上司は川村上席への指示や対話に苦労していました。その後に川村上席の上司となった別の職員も、川村上席との連絡や報告書案の確認に苦労していましたが、その職員による進捗管理や業務支援の効果もあり、川村上席は2023年1月31日と2024年3月22日に、それぞれ報告書(調査資料323、調査資料337)を公刊しました。

しかし、2024年8月に着任した橋本俊幸総括上席研究官は、川村上席を含む第1調査研究グループの進捗管理や業務支援を実質的に放棄していたため、問題は深刻化しました。橋本総括の着任時には、2022年度に実施された博士人材追跡調査に基づく報告書「博士人材追跡調査-第5次-」が2024年9月に公刊予定とされていましたが、同月に2025年3月へ延期されました。その後も具体的な理由や中間生産物が示されないまま、公刊予定が繰り返し先送りされました。川村上席は2024年3月以降、Wish2Reformで情報発信を開始した2026年3月28日時点まで、主著者となる報告書を公刊していませんでした。Wish2Reformでは、テレワーク勤務が常態化する一方で、2年以上にわたり主著者となる報告書を公刊していない川村上席について、テレワーク申告日の相当部分に勤務実態がなかった可能性があるとして、不就労の疑いを提起しました。

A-2.当時の上司であった総括上席研究官の散漫な業務姿勢と不適切な業務管理

当時の上司であった橋本総括には、前述した川村上席の業務管理のみならず、全般的に散漫で真剣味に欠ける業務姿勢が見られました。所属職員の業務内容を十分に把握せず、期限のある作業や関係者への連絡を先送りすることが常態化していました。私と他の職員は連携して、川村上席の不透明な勤務実態と報告書公刊遅延を是正するための対策を橋本総括に繰り返し提案しました。しかし、橋本総括はこれらの対策を実施せず、結果として川村上席の問題を事実上放置しました。

また、橋本総括の業務管理上の問題は、私が担当していた博士人材データベース(JGRAD)事業の運営や引継ぎにも表れました。私が2025年5月31日で常勤職員を退職することは以前から決まっていましたが、橋本総括からは、後任者の採用状況や引継ぎ方針に関する情報共有がありませんでした。後任候補者が2025年7月に着任する予定であることを橋本総括から初めて知らされたのは、常勤としての最終勤務日である2025年5月30日でした。また、私は常勤職員の退職後も客員研究官としてJGRADの引継ぎや事業支援を行う意向でしたが、橋本総括の情報の非共有等によって、客員研究官として公式の立場で行えた引継ぎや事業支援は、極めて限定的なものとなりました。

さらに、2025年9月に開催されたオンラインJGRAD連絡会では、他のJGRAD関係の客員研究官には出席の可否が確認された一方、私には同様の確認がなく、最終的に参加を拒否されました。橋本総括からは、他の客員研究官との取扱いの違いについて合理的な説明はありませんでした。私は、この対応は、人事院がパワー・ハラスメントの具体例として示す「隔離・仲間外し・無視」に当たり得ると考えました。2025年9月26日、塩崎正晴所長を含む4名の職員に対し、JGRAD事業の運営・引継ぎに関する問題に加え、川村上席の業務管理を含む橋本総括の全般的な業務姿勢について証拠資料とともに報告しました。

A-3.当時の所長による問題の放置と研究所全体のガバナンス不全

2025年9月26日の私からの報告から3日後の9月29日、塩崎所長は所内イントラネットに「業務運用の適正化について」という文書を掲載し、管理職による厳格な進捗管理や3日以上の連続テレワークを原則として認めない方針を示しました。私は当初、塩崎所長が問題を認識し、改善に向けて対応するものと期待しました。しかし、その後も川村上席のテレワーク勤務と報告書公刊の先送りは続き、橋本総括による実効的な進捗管理も行われていない様子でした。このため私は、塩崎所長が問題を認識しながらも形式的な対応にとどまり、川村上席と橋本総括の問題を結果として黙認したと考えています。

さらに、塩崎所長は、JGRAD事業の引継ぎが不十分であり、その背景に橋本総括の業務管理上の問題があることを認識していました。それにもかかわらず、私や他のJGRAD関係の客員研究官から十分な状況確認や意見聴取を行わないまま、JGRAD事業の終了を承認しました。こうした経過は、問題が担当者の段階でも、管理職の段階でも、所長を含む組織上層部の段階でも是正されなかったことを示しており、科学技術・学術政策研究所全体のガバナンスが十分に機能していなかったと考えています。

B.刑事告発状の提出とWish2Reformにおける情報発信

私は、科学技術・学術政策研究所の内部で繰り返し問題を伝え、改善策を提案しました。しかし、川村上席の勤務実態や報告書公刊遅延、橋本総括の不適切な業務管理について、塩崎所長を含む研究所上層部による実効的な是正は行われませんでした。このため、関係者の行為や対応には刑事責任が生じる可能性もあると考え、2026年3月、関連する経緯と私が保有する資料を添えて、東京地方検察庁に刑事告発状を提出しました。

その後、2026年3月28日にウェブサイト「Wish2Reform」を公開しました。Wish2Reformでは、第一に、川村上席の業務実態が不透明なテレワーク勤務と繰り返された報告書公刊遅延の問題を示しました。第二に、博士人材データベース(JGRAD)事業の運営、後任人事、引継ぎ、連絡会への参加拒否、事業終了に至る経過を示しました。これら二つの側面を通じて、橋本総括の散漫な業務姿勢と不適切な業務管理、さらに川村上席と橋本総括の問題に対して、塩崎所長を含む研究所上層部が実効的な是正措置を講じなかったことを説明しました。

Wish2Reformでの情報発信は、科学技術・学術政策研究所や関係者個人を批判することだけを目的としたものではありません。科学技術・学術政策研究所で生じた問題を具体的な事例として示し、担当者、管理職、組織上層部の各段階で問題を把握・是正する仕組みが機能しなかったことを社会に伝えるために行いました。また、この事例を踏まえ、公務員の人事評価や業務管理の制度を改善する必要性についても問題提起しました。

[1-3]本資料で取り扱う内容

2026年3月28日のWish2Reformによる情報発信後、科学技術・学術政策研究所や関係組織をめぐって複数の動きがありました。本資料では、[1-2]で示した2026年3月28日時点までの経過を前提として、その後に生じた事実や私が行った手続、関係組織から示された回答等を4つの側面から整理します。なお、概要図の2ページ目では、後述の[3]と[4]を博士人材追跡調査に関する一連の経過として一つにまとめ、3つの側面として整理しています。(https://wish.to/reform/next01/summary260814.pdf#page=2)

[2]では、東京地方検察庁に提出した刑事告発状について、作成・提出から返却に至る経過と、その後に再提出をいったん保留している理由を示します。また、Wish2Reformによる情報発信後に文部科学省 大臣官房 省改革推進・コンプライアンス室へ行った公益通報について、内部公益通報として取り扱われるまでの経過もあわせて整理します。

[3]では、2026年3月28日の情報発信で問題の一つとして取り上げた博士人材追跡調査(JD-Pro)について、その後に確認された経過を整理します。2022年度に実施された調査に基づく報告書が未公刊のまま、2023年度調査に基づく「博士人材追跡調査-第5次報告書-」(調査資料356)が公刊された経過、公刊後に確認された正誤表の内容やサイレント修正等、訂正対応に関する問題、さらに2026年度に新たな博士人材追跡調査を外部委託により実施する動きについて示します。

[4]では、2022年度博士人材追跡調査に基づく報告書が未公刊となっている経緯等を明らかにするため、科学技術・学術政策研究所に対して行った情報公開請求の内容と目的を説明します。調査の実施費用や回答規模に加え、2022年度調査に基づく報告書が未公刊となった経緯、公刊計画の変更、報告書スケジュールの不自然な記載等、各情報公開請求の内容と意図を紹介します。

[5]では、文部科学省 大臣官房 省改革推進・コンプライアンス室による公益通報への対応を、2026年3月30日の最初の通報から、内部公益通報としての正式受理、調査、8月5日の調査結果通知、その後の確認まで整理します。その上で、職階の高い職員による業務管理上の問題をどのように評価・是正するのかという、公務員組織や公益通報制度に関わる課題について検討します。