Wish2Reform

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科学技術・学術政策研究所に関する問題の検証とその後の経過

―2026年8月14日公表資料 [5]文部科学省 大臣官房による公益通報への対応と調査結果―

2026年8月14日 齋藤経史(kei@jsaito.jp)

[5]文部科学省 大臣官房による公益通報への対応と調査結果

[5-1]本パートの概要

前述の[2]刑事告発および文部科学省 大臣官房への公益通報に関する経過で示したように、私は2026年3月30日、文部科学省 大臣官房 省改革推進・コンプライアンス室の公益通報窓口に対し、科学技術・学術政策研究所における勤務実態、博士人材追跡調査の公刊遅延、業務管理等に関する公益通報として連絡を行いました。本パートでは、この公益通報について、3月30日の最初の連絡から、内部公益通報としての正式受理、調査、8月5日の調査結果通知、その後の確認までの経過を整理します。

この公益通報は、4月14日に案内された内部公益通報窓口への再送、客観的資料の提出等を経て、5月1日に文部科学省の内部公益通報対応要綱に基づく公益通報として正式に受理されました。その後、文部科学省は、私が提出した資料だけでなく関係資料を確認し、関係者への聞き取りも行った上で、8月5日に調査結果を通知しました。その通知では、通報対象となった上席研究官について勤務実態がないことは確認できず、給与支給が不適切であったとは認められないこと、報告書の公刊遅延は確認されたものの、当該上席研究官の職務懈怠がその主因とは言い切れないとの判断が示されました。8月5日の通知後も、私は調査結果やその評価について追加の照会を行いました。これに対する省改革推進・コンプライアンス室からの回答を8月10日までに確認し、同日、私からも回答への謝意を伝え、本件に関する同室との一連のやり取りを終了しました。

ただし、私は省改革推進・コンプライアンス室の対応や調査結果に落胆しているわけではありません。[2-4]で述べたように、私は省改革推進・コンプライアンス室を本件について独立した第三者として調査・評価を行う組織と位置付けていたわけではありません。本件では、省改革推進・コンプライアンス室が通報対象となった職員やその管理体制を調査する立場にありました。しかし、科学技術・学術政策研究所の所長や総括上席研究官を含む幹部人事は文部科学省本省の人事として行われるため、実質的に一体の組織であると見なすことができます。このように実質的に一体と見なし得る組織において、職階の高い職員を含む公益通報に対し、文部科学省がどのような調査・評価を行い、どのように通報者に対応し、調査結果を報告するのかについて、私は日本国民の一人として関心を持っていました。私は、Wish2Reformにおいて一連の対応や調査を広く公開することで、省改革推進・コンプライアンス室を含む文部科学省の対応それ自体を組織外の第三者である国民に評価してもらうことに意義があると考えました。文部科学省 大臣官房への公益通報に関する連絡記録は、職員の氏名等の一部の情報を伏せた上で「文部科学省 大臣官房への公益通報に関する記録」のHTML版(https://wish.to/reform/next01/mext.html)およびPDF版(https://wish.to/reform/next01/mext.pdf)で公開しています。

以下、[5-2]では、第1号・第2号公益通報をめぐる省改革推進・コンプライアンス室の初動対応を整理します。[5-3]では、資料提出から内部公益通報として正式に受理されるまでの経過、[5-4]では、正式受理後の長期間の連絡途絶と私からの進捗照会、[5-5]では、8月5日の調査結果通知とその後の確認について示します。[5-6]では、文部科学省 大臣官房への情報公開請求の内容と目的を示します。[5-7]では、一連の公益通報への対応と調査結果を踏まえ、公務員組織に関する課題や改善策について検討します。

[5-2]第1号・第2号公益通報をめぐる大臣官房の初動対応

[2-3]においても示しましたが、2026年3月30日、私は文部科学省 大臣官房 省改革推進・コンプライアンス室が公益通報窓口として公表しているメールアドレスに、通報書を添付したメールを送付しました。科学技術・学術政策研究所は文部科学省直轄の国立試験研究機関であるため、科学技術・学術政策研究所に関する文部科学省への通報が、勤務先等の内部に行う第1号公益通報に当たるのか、処分・勧告等の権限を有する行政機関に行う第2号公益通報に当たるのか、私には明確に判断できませんでした。このため、第1号・第2号のいずれに位置付けられるとしても、省改革推進・コンプライアンス室が公益通報窓口として公表しているメールアドレス(koueki@mext.go.jp)に連絡すれば、通報内容を確認した上で適切な窓口へ取り次がれるものと考えていました。

また、私が送信した同メールでは、客員研究官としての任期が終了する3月31日までに証拠に関わるファイル類を提供したい旨を伝えていました。しかし、3月31日までに省改革推進・コンプライアンス室から連絡はありませんでした。その後、最初の連絡から8日後となる4月7日に、公益通報窓口から初めて返信がありました。回答は、「(第2号)公益通報については、文部科学省が処分または勧告等を行う権限を有する事業者に関する通報のみを受け付けており、文部科学省には科学技術・学術政策研究所の職員を処分する権限がないため、本件は(第2号)公益通報の対象とはならない」という趣旨でした。

この回答は第2号公益通報についてのみ説明するものであり、第1号公益通報(内部公益通報)として取り扱う可能性については触れられていませんでした。このため、私は翌4月8日、科学技術・学術政策研究所が文部科学省直轄の研究機関であることを踏まえ、第1号公益通報として取り扱わない理由を示してほしいという趣旨のメールを返信しました。これに対し4月10日に公益通報窓口から「外部からの第2号公益通報と職員等からの第1号公益通報は別々の窓口で受け付けている」との趣旨の返信がありました。しかし、この返信にも第1号公益通報を受け付ける内部公益通報窓口の連絡先は記載されていませんでした。

私は同日、「公開されている案内や対応要綱では省改革推進・コンプライアンス室が公益通報窓口として示されている以上、仮に第1号公益通報と第2号公益通報で受付用のメールアドレスが異なるとしても、3月30日に送付したメールを室内で適切な担当へ回付することが合理的です」という趣旨を伝えました。また、仮に室内回付ができないのであれば、内部公益通報窓口の正式なメールアドレス、担当者名および内線番号を提示するよう求めました。この連絡から4日後の4月14日、公益通報窓口(koueki@mext.go.jp)から、内部公益通報窓口としてnから始まる文部科学省のメールアドレス(n*******@mext.go.jp)が初めて示されました。私は同日、案内された内部公益通報窓口に対して、3月30日に送付した通報書を改めて送付しました。その際、この連絡を4月14日に新たに行った別の通報としてではなく、3月30日から継続している通報として取り扱うよう求めました。

4月16日、その内部公益通報窓口(n*******@mext.go.jp)から返信があり、4月14日に私が送信したメールを同日受信したこと、3月30日以降の公益通報窓口とのやり取りについても省改革推進・コンプライアンス室として承知していることが説明されました。また、室長補佐の氏名と内線番号が示され、通報内容について室内で対応を検討するとの回答がありました。私は同日、この回答に謝意を伝えるとともに、追加資料や事情説明が必要な場合には可能な限り対応する旨を返信しました。

以上のように、私は3月30日の時点で、省改革推進・コンプライアンス室が公表している公益通報窓口に、公益通報として通報書を送付していました。しかし、公益通報窓口による最初の返信まで8日を要し、その回答は本件を(第2号)公益通報として受理しない理由のみを示すもので、第1号通報として取り扱える可能性や内部公益通報窓口の案内は示されませんでした。その後、私の方から第1号通報の可能性を指摘したことで、第1号公益通報の窓口が別に存在することは示されましたが、その連絡先は直ちには案内されませんでした。私は、これらの一連の対応から、公益通報窓口でありながら、公益通報の受付を避けようとする涙ぐましいほどの姿勢を感じました。私は、このような文部科学省 大臣官房 省改革推進・コンプライアンス室の公益通報窓口の対応姿勢は、Wish2Reformを通じて広く国民に伝え、評価してもらう価値のあるものだと考えました。

[5-3]資料提出と内部公益通報としての正式受理

4月16日に内部公益通報窓口から受領の連絡を受けた後は、省改革推進・コンプライアンス室との間で、通報内容の確認に必要な資料の提出に向けたやり取りが進みました。4月22日、内部公益通報窓口から、通報書に記載した客観的資料を含め、現時点で提出可能な資料をメール添付または郵送で提供するよう依頼がありました。私は同日、東京地方検察庁に刑事告発状とともに提出していた証拠資料と同様のファイル一式を、DVDおよびUSBメモリに保存して郵送する旨を回答し、送付先を確認しました。翌4月23日に内部公益通報窓口から送付先の案内を受けたため、同日、証拠資料を簡易書留で発送しました。

郵便の配達記録では4月24日に到着し、4月27日には内部公益通報窓口から資料を受領した旨の連絡がありました。その後、5月1日、内部公益通報窓口から、本件について文部科学省の内部公益通報対応要綱に基づく公益通報として受理した旨の連絡がありました。私は同日、正式受理の連絡に謝意を伝え、今後の調査において追加資料の提出や事情説明等が必要な場合には対応する旨を返信しました。このように、3月30日に公益通報として最初の連絡を行ってから約1か月を経て、本件は5月1日に内部公益通報として正式に受理されました。4月14日に内部公益通報窓口が案内されて以降は、資料提出の依頼、送付先の案内、資料の受領確認、正式受理という手続が順次進められました。

私は、正式受理後にどのような調査が行われるのかについて、大きな期待を抱いていたわけではありませんでした。私への事情聴取が行われたとしても多くても一度か二度で、通報者側と科学技術・学術政策研究所側の説明が異なれば、業務管理や勤務の実態までは確認できない、あるいは処分等につながる事実は認定できないという結論になる可能性も想定していました。

むしろ私が注目していたのは、省改革推進・コンプライアンス室が実際にどのような調査を行い、その進捗や結果について適宜連絡を行うのか、比較的短期間で確認できる内容について長期間を費やし、実質的な調査内容が見えないまま「調査を行った」という外形だけが残るのかという点でした。こうした内部公益通報として正式に受理された後の対応過程も、Wish2Reformを通じて広く国民に伝え、評価してもらう価値があると考えていました。

[5-4]正式受理後の81日間の連絡途絶と進捗照会

5月1日に内部公益通報として正式に受理された後、私は、省改革推進・コンプライアンス室がどのような調査や進捗報告を行うのかを確認するため、少なくとも2か月は私の方から連絡や催促を行わず、調査の進行と進捗報告を待つことにしていました。追加資料や事情説明が必要な場合には適宜対応する旨も伝えていたため、調査の過程で必要が生じれば、省改革推進・コンプライアンス室から連絡があるものと考えていました。

しかし、5月1日の正式受理後、省改革推進・コンプライアンス室から私に対して、追加資料の提出依頼、事情聴取、調査の進捗に関する連絡等はありませんでした。6月上旬、私は[3-3]に示した2023年度調査に基づく「博士人材追跡調査-第5次報告書-」(調査資料356)を確認し、2022年度調査に基づく報告書公刊が川村上席によってスキップされた可能性を認識しました。また、調査資料356の報道発表に軽く目を通しただけでも、複数の誤記や不正確な表現があることも把握しました。5月1日の正式受理後に把握した情報に関しても、今後、省改革推進・コンプライアンス室に情報提供する機会に説明しようと考えていました。

その後7月に入り、私は当初考えていた2か月を過ぎても全く連絡がありませんでした。私は省改革推進・コンプライアンス室に任せて私の方から連絡や催促を行わない方針でしたが、連絡途絶の期間が長すぎると考えました。正式受理から81日後となる7月21日の13時頃、公益通報窓口(koueki@mext.go.jp)にCCを入れた上で、内部公益通報窓口(n*******@mext.go.jp)に調査の進捗を初めて照会しました。その照会では、80日超の連絡途絶は通常想定される期間を超えていることを付記した上で、現時点における調査の進捗状況および今後の見通し等を尋ねました。加えて、進捗情報の整理・文章化に時間がかかることを懸念し、メールを受信次第、まず受領した旨を返信するよう依頼しました。

しかし、受領返信を依頼した7月21日のメール送信から2日以上が経過した7月23日の夕方になっても、省改革推進・コンプライアンス室から受領連絡はありませんでした。このため、私は7月23日の18時頃に4月に確認していた文部科学省の内線番号宛てに電話を掛けました。私からの電話を受けた男性職員に私の氏名を伝え、公益通報を担当している室長補佐への取り次ぎを求めたところ、男性職員から「室長補佐は、今は不在となっており、明日は登庁予定となっている」という回答がありました。このため私から「では、明日に改めて電話を掛け直します」と伝えて電話を切りました。電話を切った直後の同日18時30分頃に内部公益通報窓口(n*******@mext.go.jp)から、現在も事実関係を確認中であること、追加的な主張があれば連絡してほしいこと、しばらく待ってほしい旨のメール連絡がありました。

その内部公益通報窓口からのメール連絡を受け、同日19時30分頃、私は翌24日の電話連絡を見合わせる旨をメールで返信しました。加えて、今後も問い合わせには随時対応する旨を伝えた上で、7月31日までに実施した調査や今後の見通しを可能な範囲で連絡するよう依頼しました。また、6月上旬に把握した2022年度調査に基づく報告書公刊スキップの可能性についても追加情報として伝えようかと考えましたが、省改革推進・コンプライアンス室の確認状況が不明であったため、追加情報は確認状況や問い合わせ事項が明確になった段階で提供したい旨を連絡しました。

この7月23日に私が送信したメールに対して省改革推進・コンプライアンス室からの返信はありませんでした。ただし、7月31日を期日とする報告を依頼したメールに対して、断りの連絡がなかったことから7月31日には何らかの報告があるものと期待していました。その後、7月31日の13時頃に公益通報窓口(koueki@mext.go.jp)から、現在も事実関係を確認中であり、速やかに調査結果を取りまとめて連絡したいので「今しばらくお待ちいただければ」とのメールがありました。私は、依頼していた確認実施の概要・処理段階・今後の見通しが示されなかったことには不満がありましたが、同日の15時頃、問い合わせには随時対応する旨を添えて、了承のメールを返信しました。

以上のように、5月1日の正式受理後、私が7月21日に進捗を照会するまでの81日間、省改革推進・コンプライアンス室から私に対する事情聴取、追加資料の提出依頼、調査の進捗に関する連絡は一度もありませんでした。私から進捗を照会した後も、7月31日の時点では、私が求めた確認実施の概要、処理段階、今後の見通しは示されず、事実関係を確認中であり、調査結果を速やかに取りまとめるとの説明にとどまりました。私はこの時点でも、8月以降に私への事情聴取や追加資料の提出依頼が行われる可能性があると考えていました。しかし、その5日後の8月5日、省改革推進・コンプライアンス室から調査結果と通報対応終了の通知を受けることになります。

[5-5]公益通報の調査結果通知と調査終了後の確認

7月31日のメール連絡から5日後の8月5日、公益通報窓口(koueki@mext.go.jp)から調査結果のメール通知があり、本件について通報対応を終了する旨が示されました。メール通知では、通報対象となった上席研究官について、勤務実態がないことは確認できず、その給与支給が不適切であったとは認められないとの判断が示されました。一方、「博士人材追跡調査-第5次報告書-」の公刊が遅延していたこと自体は確認されたものの、当該上席研究官の職務懈怠がその主因とは言い切れないとの記載がありました。

私はこの通知を受け、同日、省改革推進・コンプライアンス室に対して調査内容について追加の確認を行いました。主な確認事項は、第一に、どのような資料を確認し、どの範囲の関係者に聞き取りを行ったのか、第二に、川村上席本人の勤務実態だけでなく、橋本総括による業務の進捗管理やテレワーク勤務の承認、塩崎所長を含む管理体制についても調査・評価を行ったのか、第三に、私への事情聴取を行わないまま「当該上席研究官の職務懈怠が主因とは言い切れない」と判断した根拠は何かという点でした。回答できない事項についてはその旨を示し、回答可能な範囲だけでも説明してほしいと依頼しました。

翌8月6日、内部公益通報窓口(n*******@mext.go.jp)から回答がありました。具体的な調査内容については回答を差し控えるとしながらも、私が提出した資料だけでなく関係資料も確認し、関係者への聞き取りを実施したことが説明されました。その上で、勤務実態がないことや職務懈怠は確認できなかったとの追加の説明がありました。誰に対してどのような聞き取りを行ったのかは示されず、[5-4]で示したとおり、通報者である私自身に対する聞き取りや追加情報の提供依頼は、5月1日の正式受理から8月5日の通報対応終了まで一度も行われませんでした。

さらに8月7日、内部公益通報窓口(n*******@mext.go.jp)から、橋本総括による進捗管理、テレワーク勤務の承認その他の管理体制についても、関係資料の確認や関係者への聞き取りを通じて調査対象に含めていたとの説明がありました。しかし、川村上席について勤務実態がないことや職務懈怠が確認できなかったこととは独立して、管理体制それ自体の適否をどのように評価したのかは別の論点です。省改革推進・コンプライアンス室が管理体制について問題はなかったと評価したのか、それとも管理体制の適否について評価していないのかに関しては、この時点では明示されませんでした。このため、同日、私は内部公益通報窓口に対し、管理体制について問題がなかったと評価したのか、それとも管理体制の適否そのものについては評価していないのかを改めて照会しました。

8月10日、内部公益通報窓口(n*******@mext.go.jp)から、この照会に対する回答がありました。具体的な調査内容や実施状況についての回答は差し控えるとした上で、当時の総括上席研究官および所長による進捗管理、テレワーク承認その他の管理体制について、不適正な給与の支払と認められる程度の問題はなかったとの評価が示されました。私は同日、この回答内容を確認した旨と謝意を伝え、本件に関する省改革推進・コンプライアンス室との一連のやり取りを終了しました。

なお、省改革推進・コンプライアンス室からの連絡経路についても一つの変化がありました。[5-2]で示したように、4月には第1号公益通報と第2号公益通報は別々の窓口で受け付けているとの説明を受け、内部公益通報窓口としてn*******@mext.go.jpが提示されました。実際、4月以降の内部公益通報に関するメール連絡はこの差出人アドレスから送信されていました。しかし、省改革推進・コンプライアンス室からの7月31日のメール連絡や8月5日の調査結果通知では、再び公表されている公益通報窓口(koueki@mext.go.jp)が差出人アドレスとして使用されました。私には、4月に省改革推進・コンプライアンス室が自ら示した「第1号・第2号で窓口を分ける」という設定を途中から忘れてしまったようにも見え、「自ら示した設定を忘れたらダメでしょう」とツッコミを入れた方がよかったものかと、少し心残りです。

以上の確認により、省改革推進・コンプライアンス室が、私の提出資料以外の関係資料を確認し、関係者への聞き取りを行い、進捗管理やテレワーク承認を含む管理体制も調査対象としていたことは確認できました。また、管理体制についても、不適正な給与の支払と認められる程度の問題はなかったとの評価が示されました。一方で、通報者である私への事情聴取は一度も行われず、具体的にどの資料を確認し、誰にどのような聞き取りを行い、どのような事実認定や評価基準に基づいてこの判断に至ったのかについては明らかにされませんでした。私は、調査結果そのものだけでなく、何をどのように調査し、どのような基準で評価し、その結果を通報者にどこまで説明するのかという対応過程も含めて、公益通報への対応を評価する必要があると考えています。今回の文部科学省 大臣官房 省改革推進・コンプライアンス室の対応過程をWish2Reformにおいて広く公開し、国民に評価してもらうことにも大きな意義があると考えています。

[5-6]文部科学省 大臣官房への情報公開請求

2026年8月12日、私は文部科学省に対し、省改革推進・コンプライアンス室による公益通報への対応に関する2種類の行政文書について情報公開請求を行いました。これらの情報公開請求は、私自身の公益通報について個別の調査内容をさらに追及することを目的とするものではありません。文部科学省が第1号の内部公益通報および第2号の外部公益通報について、どのような具体的なルールを定めて運用しているのかを確認し、今回の一連の対応がそのルールに沿ったものであったのかを検証することを目的としています。

1つ目は、「文部科学省内部公益通報対応要綱」に基づく内部公益通報への対応に関する行政文書です。(https://www.mext.go.jp/content/20220601-mxt_somukou-000000439_2.pdf)同要綱では内部公益通報への基本的な対応が定められており、第10では、要綱に定めるもののほか、公益通報者保護法の実施に関して必要な事項を省改革推進・コンプライアンス室長が定めることとされています。そこで、第10に基づいて省改革推進・コンプライアンス室長が定めた規程、内規、手順書その他の行政文書一式を請求しました。公表されている要綱だけでなく、それを実際の業務に適用するためにどのような具体的なルールが定められているのかを確認するためです。

2つ目は、「文部科学省外部公益通報対応要綱」に基づく外部公益通報への対応に関する行政文書です。(https://www.mext.go.jp/kouekitsuuhou/1292565.htm)同要綱の「第3 通報対応の体制 1 組織体制」では、総括通報等責任者が「通報又は相談への対応に関する規程類の整備」等を総括することとされています。このため、この規定に基づいて整備された規程、内規、マニュアルその他の行政文書一式を請求しました。公表されている要綱だけでなく、その要綱を実際の業務に適用するために、どのような具体的なルールが整備されているのかを確認するためです。

また、同要綱の「第4 通報への対応(1)通報の受付 ウ」では、「書面、電子メール等、通報者が通報の到着を確認できない方法によって通報がなされた場合には、速やかに通報者に対して通報を受領した旨を通知するよう努める。」と定められています。私が3月30日に公表されている公益通報窓口へ送付した通報は、第2号の外部公益通報としての受理が検討されましたが、最初のメール返信があったのは8日後の4月7日でした。私は、この対応一つを取り上げても、公表されている要綱に違反している可能性が高いと考えています。

今回の一連の経過では、このほかにも、第1号公益通報の窓口が別に存在することが私からの照会を経て初めて案内されたこと、内部公益通報として正式に受理された後に81日間にわたって事情聴取、追加資料の提出依頼、進捗に関する連絡がなかったこと、さらに最終的にも通報者である私への聞き取りや追加情報の提供依頼が一度もないまま調査結果が取りまとめられたこと等が確認されています。

情報公開請求によって内規、マニュアル等を確認することで、今回の一連の対応が文部科学省自身の定めたルールに沿ったものであったのかだけでなく、そのルール自体が公益通報を適切に受け付け、公正な調査・判断・評価につなげる実効性のある仕組みとなっているのかについても検証したいと考えています。ただし、私の関心の中心は、文部科学省 大臣官房 省改革推進・コンプライアンス室という特定の部署や公益通報という制度そのものにあるわけではありません。私が改革したいと考えているのは、今回のような対応の背景にある公務員組織全体に通じる問題です。

省改革推進・コンプライアンス室の担当者にとっても、公益通報の受付を避けようとする涙ぐましいほどの姿勢をとるより、定められた規定に沿って通報を受領し、要綱に沿った通常の対応を行う方が、精神的にも業務的にも負担は小さかったように思います。加えて、双方から聞き取りを行い、説明に齟齬がある場合には、業務メール等の記録の有無や内容と照らし合わせることで、調査担当部署として可能な範囲で公正な評価・判断を行うことはできたと考えます。こうした方法であれば、比較的短期間で一定の公正性・中立性のある調査・評価を行うことも可能だったのではないかと考えています。それにもかかわらず、なぜ今回のような対応になったのか。そのような対応を生じさせ得る公務員組織の構造や制度について考える必要があります。

[5-7]公益通報への対応から考える公務員組織と制度改革

今回の公益通報への対応を振り返ると、まず改善が必要だと考えるのは、通報を受け付ける入口の段階です。[5-2]で示したように、私は3月30日に省改革推進・コンプライアンス室が公表している公益通報窓口へ通報書を送付しました。しかし、最初のメール返信まで8日を要し、その回答では(第2号)公益通報として受理しない理由のみが示され、第1号の内部公益通報として取り扱う可能性については触れられませんでした。その後も、私から照会して初めて内部公益通報の窓口が別に存在することが示され、その連絡先が実際に案内されるまでには、さらにやり取りを要しました。

私は、このような初動対応には、通報内容を確認して適切な制度や担当者につなぐことよりも、まず受け付けない理由を探す方向に意識が向いていたように感じます。第1号の内部公益通報では、通報対象者や調査担当者が同じ省庁の職員であり、直接の上下関係がなくても、過去の勤務関係等を通じた組織内の人間関係があります。職階の高い職員が通報対象となる場合には、担当者が明示的な指示を受けなくても、上位者の意向を忖度し、問題を小さく扱う方向へ判断が傾く可能性があります。

第2号の外部公益通報についても、行政機関の外部からの通報であるというだけで、常に十分な独立性が確保されるとは限りません。中央省庁が所管する法人には、その省庁の出身者や退職者が役職員として勤務している場合もあり、当該省庁の現職職員と元職員との人的なつながりが存在することがあります。このような場合、当該省庁の勤務経験者や現職職員と懇意な人物が通報対象者となったときには、人的関係への配慮や忖度によって、問題を小さく扱う方向へ判断が傾く可能性があります。

私は、中央省庁における公益通報については、公務員組織の通常の指揮命令系統だけで受付、調査、評価を完結させない仕組みが必要だと考えています。そのため、少なくとも中央省庁に寄せられる内部公益通報および外部公益通報については、政治任用によって通常の公務員組織とは異なる立場に置かれている大臣、副大臣、大臣政務官のうち、あらかじめ担当を定めた者が、公益通報窓口として公表されたメールアドレスに届くすべての通報を、公務員組織による選別や要約を経ることなく、リアルタイムで確認できる仕組みを設けることが望ましいと考えています。

どの通報が重要で、どの通報を政治任用の担当者に報告するかという判断自体を公務員組織だけに委ねれば、その選別の段階で、通報対象者の職階や人的関係等によって判断や対応が歪む可能性があります。このため、通常の公務員組織からは一定の距離を置いた政治任用の担当者が、通報内容そのものに加えて、その後の受理・不受理の判断、調査の進捗および結果を継続的に確認できるようにし、通常の公務員組織によるフィルターを介さず公益通報への対応過程を把握できる仕組みとすることが重要だと考えています。

ただし、私がより根源的な問題だと考えるのは、公益通報対応の体制といった各論ではありません。また、公益通報者保護法上の通報対象事実に該当し得る犯罪行為等が、公務員組織の中で日常的に発生するわけではありません。一方、業務怠慢、公務員倫理上の問題、不公正な意思決定、組織内の問題提起に対する軽視や黙殺といった問題は、より高頻度で生じ得ます。むしろ、日常的な組織運営という観点では、こうした「犯罪とは言えないが、組織として放置すべきではない問題」をどのように是正するかが重要です。

こうした状況を改善する上で、私は、2026年3月28日のWish2Reformで「公務員組織における人事評価および業務管理の改善に関する提言」として示したように、人事評価のあり方を見直すことが重要だと考えています。(https://wish.to/reform/solution.html)公務員組織では、原則として職階の高い職員が職階の低い職員を一方的に評価する形式で人事評価が行われます。しかし、その一方向の評価だけでは、職階の高い職員に業務怠慢等があり、職階の低い職員から問題提起や批判があったとしても、通常は人事評価に反映されません。むしろ、評価権限を持つ側と評価される側との力関係によって、問題を指摘する側が不利益を懸念し、問題提起や批判を控える方向に働く可能性すらあります。

このため、仮に職階の高い職員に業務怠慢等があったとしても、職階の低い職員にとっては、見て見ぬふりをすることが組織内で身を守るための合理的な処世術となり得ます。例えば、一つの課において10名の課員がA課長の業務怠慢等の問題を認識していたとしても、現状の制度では、課員が職階の上位にあるA課長を人事評価することも、課員自身が実効性を伴う是正措置をとることもできません。中央省庁では、A課長の部下であることを「A課長に仕えている」と表現することもあります。このような表現に象徴されるように、A課長の指示や意向が公務員倫理に反する、あるいは業務の効率性を著しく損なうものであったとしても、それに従う形でA課長に奉仕することが組織内では合理的となってしまう構造に問題の根源があると考えています。

このような構造を変えるためには、職階の高い職員についても、上司による一方向の評価だけではなく、部下や同僚による多面的な評価を人事評価の仕組みに取り入れることが必要です。業務指示の明確さ、進捗管理、部下からの意見や異論への対応等について、複数の立場から継続的に評価することで、上司からの評価だけでは把握しにくい管理職の業務姿勢や管理能力を、人事上の判断に適切に反映させることができます。

このような360度評価に相当する制度によって、平時の人事評価を通じて管理職として不適格な者が管理職に登用されにくい体制を構築するとともに、管理職となった後も、部下からの批判や改善提案を軽視・黙殺するのではなく、真摯に受け止めて対応することが自身の評価にもつながる仕組みを作ることができます。職階の高い者に一方的な評価権限を与えるのではなく、管理職自身も周囲から継続的に評価される状態を作ることで、問題が深刻化する前の日常的な段階から、より適切な業務管理や組織運営を促すことができると考えています。また、管理職に限らず、部下や同僚に協力的に接し、周囲の業務を支えている職員については、そうした日常的な貢献が評価に反映されることになります。

一方、このような平時の評価制度を整備するだけでは、職階の高い職員について具体的な問題が生じた場合への対応として十分ではありません。業務怠慢、不適切な業務管理、公務員倫理上の問題、不公正な意思決定等が具体的に指摘された場合には、通常の指揮命令系統の中だけで処理するのではなく、そこから一定程度独立した立場の者が、問題の有無や程度を検証・評価し、必要な是正につなげる仕組みも必要だと考えています。

中央省庁であれば、上述したように、政治任用によって通常の公務員組織とは異なる立場にある政務三役に相談し、必要に応じて問題の確認や調査を求める経路を設けることも一つの方法です。政務三役は、担当する省庁の政策や業務内容を踏まえて個々の問題を評価できる立場にあるとともに、幹部職員の人事や組織運営にも関与する立場にあります。重要なのは、職階の高い職員に関する問題であっても、その職員を取り巻く通常の上下関係や人的関係の中だけで判断が完結せず、別の立場から問題の有無や程度を確認できる仕組みが存在することです。

また、このような仕組みには、実際に調査や是正を行う機能だけでなく、問題行動を未然に抑止する効果も期待できます。職階の高い職員にとって、自身の業務姿勢や意思決定について、部下から具体的な問題提起があれば、通常の指揮命令系統とは異なる立場からそのような検証が行われ得ると認識すること自体が、業務怠慢や公務員倫理に反する行動に対する抑止力となり得ます。実際に政務三役への相談や独立した検証が行われる事案が多くなくても、「問題があれば、実効性のある調査・評価が行われ得る」と職階の高い職員が認識することに、制度として大きな意味があると考えています。

平時には360度評価に相当する制度によって管理職の業務姿勢や適性を継続的に確認し、具体的な問題が生じた場合には、通常の指揮命令系統から一定程度独立した立場で検証・評価し、必要な是正につなげる。この二つの仕組みを組み合わせることで、職階の低い職員が問題を見て見ぬふりすることを合理的な処世術としなくてもよい公務員組織に近づけることができると考えています。