文部科学省 科学技術・学術政策研究所に関する問題
-業務管理および博士人材データベース(JGRAD)の事業中止について-
[1]本稿の概要
本稿は、文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)において、2021年以降に生じた業務管理上の問題および博士人材データベース(JGRAD)事業に関する問題について、私が確認できる事実関係を整理したものです。本稿は、国民全体および各種メディアへの公益通報および内部告発としての側面を持つとともに、科学技術・学術政策研究所における問題を一例として、公的機関において構造的に発生しやすい組織運営上の課題を広く示し、その改善につなげることを目的としています。
本稿では、私が科学技術・学術政策研究所における業務の中で体験し把握した具体的な事情を示します。まず、科学技術・学術政策研究所における特定職員に関して、恒常的なテレワーク勤務と不透明な勤務実態、報告書公刊の反復した遅延といった問題が発生しています。さらに、この職員の上司となった者による勤務実態および業務進捗の管理の実質的な放棄が問題を深刻化・複雑化させました。加えて、これらの深刻な問題が、研究所所長を含めて情報共有された後も実効的な改善措置が講じられませんでした。科学技術・学術政策研究所は、業務管理およびガバナンスに関して深刻な問題を抱えていると考えられます。
また、これらの業務管理上の問題は、私が担当していたJGRAD事業の運営、後任人事、引継ぎ、客員研究官としての関与の在り方、JGRAD事業の中止決定にも影響を及ぼしています。このため、本稿[4]の詳細事情では、個別の論点を完全に切り分けるのではなく、経過を示す形式で主に時系列に沿って説明します。
[2]本稿の構成および主な問題
本稿で扱う内容は、大きく分けて二つの側面から構成されます。第一の側面は、科学技術・学術政策研究所における勤務管理、研究業務の進捗管理、マネジメント、ガバナンスに関するものです。特に、第1調査研究グループの特定職員の勤務実態の不透明さや報告書公刊の遅延に対して、管理職および研究所幹部による十分な確認および是正が行われていなかった点を中心に扱います。本稿[4]の詳細事情の前半部では、主に第一の側面について概ね時系列に沿って説明します。
続いて第二の側面として、第一の側面で示したものと同一のマネジメント体制の下での、JGRAD事業の運営、後任人事、引継ぎおよび客員研究官の取り扱い、JGRAD事業の中止決定に関して、私が確認できる事実関係を示します。本稿[4]の詳細事情の後半部では、主にこの側面について時系列に沿って説明します。
これらの第一および第二の側面は一見独立しているように見えますが、科学技術・学術政策研究所における共通の業務管理およびガバナンスの特性に起因して発生しているものです。続く[3]においては、主に第一の側面に関連して、行動・対応の適切性に特に疑義があると考えられる人物として3名の氏名と問題点の概要を示します。[4]において詳細事情を主に時系列に沿って説明します。[5] は本稿の結びとなっています。
[3]行動・対応の適切性に特に疑義があると考えられる3名の人物
ここでは、科学技術・学術政策研究所の業務に関する行動・対応の適切性に特に疑義があると考えられる人物およびその問題点の概要を示します。なお、これら3名の人物の行動・対応については、詐欺罪、虚偽公文書作成罪、背任罪に該当する可能性があることから、より詳細な証拠資料を添付の上、2026年3月12日付で東京地方検察庁に対し刑事告発を行っています。
[3A]川村真理 科学技術・学術政策研究所 第1調査研究グループ 上席研究官
川村上席は2021年9月1日に文部科学省 科学技術・学術政策研究所 第1調査研究グループへ着任しました。川村上席は着任以降2026年3月現在に至るまで、1000日を超える大半の勤務日が終日テレワークとなっており、午前のみ、午後のみといった部分的なテレワークを含めると98%以上の勤務日がテレワークとなっています。また、2024年3月を最後に川村上席には主著者となる報告書公刊がなく、報告書公刊予定の反復した先延ばしが続いています。
川村上席による報告書公刊の反復した長期間の遅延を能力不足で説明することは困難であり、川村上席がテレワークを申告した勤務日において勤務実態がない日が相当程度含まれている可能性があると考えられます。特に[3B]に示す2024年8月の橋本総括の着任以降、実質的な勤務実態の管理、進捗管理が行われず、川村上席の終日テレワーク日の大半について勤務実態が存在しない可能性が示唆されます。
[3B]橋本俊幸 科学技術・学術政策研究所 第1調査研究グループ 総括上席研究官
橋本総括は、2024年8月1日に文部科学省 科学技術・学術政策研究所 第1調査研究グループへ総括上席研究官として着任して以降、業務全般に対して散漫で真剣味に欠ける姿勢をとってきました。橋本総括の散漫で真剣味に欠ける業務姿勢の一環として、[4]にて詳述するように川村上席の勤務実態の不透明なテレワークおよび反復した報告書公刊遅延を黙認してきました。私を含む他の研究所職員から求められても、橋本総括は川村上席への勤務実態や業務進捗の確認を行わず、正常化させる対応策をとりませんでした。橋本総括は、川村上席のテレワークとしての出勤記録を疑うに足る合理的事情が存在するにもかかわらず、川村上席の出勤申請をそのままに給与に反映される出勤簿を承認してきました。
加えて、橋本総括は、私が担当していたJGRAD事業の運営、後任人事および引継ぎに関しても、適切なマネジメントを行っていませんでした。具体的には、後任人事に関する重要な情報の共有や、引継ぎに向けた計画的な調整が行われず、事業継続に支障を生じさせる状況が継続していました。これらは単なる不作為や怠慢にとどまらず、必要な情報共有および調整を意図的に行わなかったと考えられます。また、橋本総括は2025年9月のオンラインJGRAD連絡会への私の参加可否をめぐり、合理的な説明を行わないまま、他の客員研究官とは異なる取扱いを行いました。この対応は人事院が具体例として示すパワー・ハラスメントに該当し得るものと考えられます。
[3C]塩崎正晴 科学技術・学術政策研究所 所長
塩崎所長は、2025年7月15日に文部科学省 科学技術・学術政策研究所の所長に着任しました。[4]にて後述するように2025年9月26日、私は塩崎所長を含む4名の科学技術・学術政策研究所職員に対し、メールによる連絡を行いました。当該メールは、証拠資料を添付の上、橋本総括の複数の問題行動を示し、是正措置を求めるものでした。このメールにおいては、川村上席の勤務実態が不透明なテレワークおよび橋本総括による無条件承認にも言及していました。しかし、その後も塩崎所長は、橋本総括による適正なマネジメントおよび川村上席のテレワークとしての出勤記録を疑うに足る合理的事情が存在するにもかかわらず、実効的な是正措置を講じないまま、給与に反映される出勤簿の承認を継続しています。
加えて、私の2025年9月26日のメール連絡によって塩崎所長はJGRAD事業の引継ぎが十分に行われていないこと、橋本総括によるマネジメントに重大な問題が存在することを認識したと考えています。にもかかわらず、塩崎所長は橋本総括によるパワー・ハラスメントの防止、引継ぎの回復その他のJGRAD事業立て直しに向けた具体的措置を講じていませんでした。その後、塩崎所長は私および他の客員研究官に対するJGRAD事業に関する状況確認や意見聴取も行わないままJGRAD事業の中止を承認し、当該事業は中止に至りました。これらの対応は、研究所の責任者として求められる調査・是正義務を果たしていないものと考えられます。
[4] 詳細事情
詳細事情は長文となるため、[4]全体ページおよび各セクションページを用意しています。
[5]結び
本稿[4]の前半部では、主に川村上席による勤務実態が不透明なテレワークおよび報告書公刊の反復した遅延に焦点を当て、これらに対して管理職および研究所幹部において問題が認識された後も、適切な確認や是正が行われなかった点を中心に論じました。また、[4]の後半部では、主にJGRAD事業に関する後任人事、引継ぎおよび事業の中止決定に焦点を当て、橋本総括が必要な情報共有および調整を行わなかった点、さらに塩崎所長が橋本総括にパワー・ハラスメントや業務管理に関して重大な問題があると認識した後においても、実効性のある是正措置が講じられなかった点を中心に論じました。
本来、業務上の問題は、担当者、管理職、組織上層部と段階的に把握・是正されるべきものです。しかし、本件では、まず担当者において業務遂行に対する誠実な対応が行われず、次に管理職においても状況の把握および是正に向けた責任ある対応がなされず、さらに組織上層部においても実効性のある統治および監督が機能しませんでした。すなわち、本件においては、問題が認識されていたにもかかわらず、いずれの段階においても実効的な是正が行われなかった点に本質があります。このように、各段階において本来果たされるべき役割がいずれも十分に機能しなかった結果、問題は是正されることなく放置され、組織全体のマネジメント機能の不全となったと考えられます。
今後、同様の問題の再発を防止するため、公務員組織における業務管理およびガバナンスの在り方について、実効性のある検証および改善がなされることを求めます。